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公費解体とは?対象、しくみ、解体までの流れ、メリット・デメリットを解説!
令和6年能登半島地震では、多くの家屋が倒壊し大きな被害が発生しました。
地震で発生した倒壊家屋は、誰が費用を払って撤去しているのか気になった人もいるのではないでしょうか。
実は大災害で半壊以上の被害を受けた家屋は「公費解体」で自治体が費用を払い解体してくれます。
本記事では公費解体とは何か、公費解体までの流れやメリット・デメリットについて解説します。
公費解体についての知識を得ておき、大災害発生に備えておきましょう。
公費解体制度の概要
公費解体を利用する際には、次の2点について理解しておく必要があります。
- 公費解体制度とは
- 自費解体費用償還制度との違い
公費解体は誰でも利用できるわけではなく、内容をしっかりと理解しておかなければなりません。
また、公費解体と似た制度である、自費解体費用償還制度との違いも確認しておきましょう。
公費解体制度とは
公費解体制度とは「特定非常災害」に指定された災害によって、家屋が全壊した場合は建物の解体・撤去を自治体がおこなってくれる制度です。
半壊の場合は、一定条件を満たさなければ解体・撤去までしてもらうことはできません。
ただし、半壊でも廃棄物の運搬・処分・処理は受け付けてもらえます。
なお、過去に特定非常災害に指定された主な災害は、次のとおりです。
- 令和6年能登半島地震
- 阪神・淡路大震災
- 東日本大震災
- 熊本地震
- 令和元年台風第19号 など
上記のように特定非常災害は大規模な災害にしか適用されず、2024年3月現在、8つの災害にしか適用されていません。
自費解体費用償還制度との違い
自費解体費用償還制度とは、特定非常災害の指定前に自費で建物の解体・撤去をおこなった場合、費用のすべてもしくは一部自治体から金銭を補助してもらえる制度です。
自費解体費用償還制度で補助してもらえる金額は、自治体が算定する金額であり、解体費用を全額補助してもらえないケースもあります。
また、建物が全壊・半壊していないと自費解体費用償還制度は利用できません。
対象(令和6年能登半島地震の場合)
公費解体を受けるには、特定非常災害で被災する以外にも条件があり、条件は各特定非常災害によって異なります。
ここでは、令和6年能登半島地震の例を用いて、公費解体の対象が誰なのか、どのような建物なのかみていきます。
対象者
令和6年能登半島地震の対象者は、令和6年1月1日時点(被災日)で被災家屋などを所有している人です。
ただし、次の人は対象者から除外されます。
- 被災した時点で建物を所有していない人
- 被災日以降に売買や贈与で所有権移転をした人
- 所有者と申請者が異なり、その申請者が所有者から公費解体の同意を得ていない人
また、被災日以降に相続で所有権を得た人については、公費解体の対象者になります。
対象となる建造物
令和6年能登半島地震の公費解体の対象となる建造物は次のとおりです。
- り災証明書で半壊以上と判定された家屋とその基礎
- 家屋に付属する浄化槽・便槽など
ただし、家屋に付属する浄化槽・便槽などは、以下の点に注意しなければなりません。
※住宅と同時に解体できる場合のみ補助の対象となる
※解体工事後のほかの土地から集められた土は対象外になる
※敷地などの状況により解体・撤去ができないケースもある
※庭木・庭石などは補助の対象外になる
解体・撤去の対象にならないケース・もの
次のようなケースや建造物などの場合、解体・撤去の対象となりません。
- リフォームするための解体、屋根や外壁などの建物の一部を解体するケース
- り災証明書などで損壊の判定がされる前に行った自費で解体してしまい、損壊の程度が半壊以上と判断できない家屋
- 単独で解体しなければならない浄化槽や便槽、カーポートなど
- アスファルト舗装や砂利などの敷設物
- ブロック塀やよう壁、庭木、庭石など
- 家屋や建造物解体後の整地費用
ただし、単独で解体しなければならない浄化槽や便槽、カーポートなどについては、解体工事実施に支障があるケースに限り解体の対象となることもあります。
対象となる費用
令和6年能登半島地震の公費解体で補助対象となる費用は、次のとおりです。
- 家屋の解体費用と運搬費用
- 家屋の基礎の解体費用と運搬費用
なお、いくら補助されるのかは各自治体によって異なります。また、運搬費用については運搬する距離によって補助額が変わります。
受付から解体・撤去までの流れ(令和6年能登半島地震の場合)
令和6年能登半島地震の公費解体をおこなう場合、受付から解体・撤去まで次のように多くの手続きが必要です。
- 申請・審査
- 現地調査
- 決定通知
- 事前立会
- 解体・撤去工事
- 完了立会
- 完了通知
- 滅失登記
上記の手続きがどのような内容なのかみていきましょう。
申請・審査
公費解体を申請するには、次の書類を準備して申請しなければなりません。
- 被災家屋等の解体・撤去に係る申請書
- 被災家屋などの「り災証明書」か「被災証明書」
- 申請者の身分証明書
- 申請者の印鑑登録証明書
- 被災家屋等の配置図
- 被災家屋等の状況写真
- 固定資産評価証明書
- 解体及び撤去する被災家屋等の一覧
- 実印
ただし、申請する人によって準備しなければならない書類が変わるため。申請する前には必ず自治体に必要書類を確認しておきましょう。
なお、令和6年能登半島地震の公費解体の受付は、令和7年3月31日までです。
すべての書類が整ったら、自治体が公費解体の審査を開始します。
現地調査
公費解体の審査では、現地の確認がおこなわれます。
現地では家屋や構造などの照合がおこなわれます。なお、現地調査の際には、申請者も立会をしなければなりません。
決定通知
現地確認と審査が終わると、自治体から解体・撤去の決定通知書が送られてきます。
なお、決定通知書が届いてから解体を取りやめたい場合は、取下書の提出が必要になるため注意しましょう。
事前立会
決定通知書が届いたら、解体現場で今後の解体の流れを確認します。
どの建物を解体・撤去するのか、解体方法はどうするのか、作業の流れを自治体と申請者とで確認していきます。
解体・撤去工事
事前立会が終わったら、解体業者より申請者に対して解体工事の着工日がいつになるのか連絡がきます。
解体工事の着工日前には、次の項目を終わらせておかなければなりません。
- 近隣の人に解体工事を実施することを周知しておく
- 電気・電話・水道・ガスなどの解約・停止の手続きをしておく
- 家財や家庭ごみの搬出や処分をしておく
なお、解体工事の着工日よりも前に電気や水道、ガスの解約・停止の手続きをしておかないと解体工事ができないことには注意しましょう。
完了立会
解体工事が完了したら、解体が本当に終わっているか現地で確認します。
完了通知
解体工事が終わったか確認したら「被災家屋等の解体・撤去完了通知書」が届きます。
被災家屋等の解体・撤去完了通知書が届いたら、被災家屋等の所在地や概要及び撤去完了日など記載されている内容を確認しておきましょう。
滅失登記
被災家屋等の解体・撤去完了通知書が届いたら、建物の滅失登記がおこなわれます。
通常の解体工事の場合は建物所有者が滅失登記をおこなわなければなりませんが、公費解体の場合自治体の職権でおこなってくれます。
ただし、建物登記に附属建物登記がある場合で、附属建物に該当する建物が解体されずに現存する場合は職権での滅失登記がおこなえません。このような場合は、建物所有者が自ら滅失登記をおこなう必要があります。
公費解体のメリット・デメリット
公費解体を利用すれば解体費用の全額、または一部を負担してもらえるメリットがあるもののデメリットもあります。
公費解体を利用する際には、メリットとデメリットを理解してから申請しましょう。
メリット
公費解体のメリットは、次のとおりです。
- 申請には期限があるものの自費負担がない
- 一部負担だけだとしても自費負担が軽減される
- 解体業者との連携は基本的に自治体がおこなってくれる
- 滅失登記を職権でおこなってくれる など
被災した場合、金銭的に困窮する可能性が高く、費用負担が軽くなるのは大きなメリットです。
また、手続きややり取りの一部を自治体がおこなってくれるため、手間も多少減らすことが可能です。
デメリット
公費解体のデメリットは、次のとおりです。
- 申請の準備が大変
- 解体工事の完了までに時間がかかる
- 半壊未満の建物には適用されない など
公費解体にはメリットが多くあるものの、デメリットも多くあります。
とくに申請準備までが大変であることは大きなデメリットです。
申請者によっては実印が必要になるものの、大災害を受け自宅が半壊以上し実印を無事に持ち出せている人はそう多くないはずです。
実印の作成、実印の登録変更など、公費解体以外の手続きが多く発生すると考えておいたほうがいいでしょう。
公費解体の注意点
公費解体する際には、次の点に注意しなければなりません。
- 所有者全員の合意が必要
- 残置物は事前に撤去しなくてはいけない
- ブロック塀や庭木など対象にならないものがある
- 災害発生日以降に所有者が変わったら対象にならない
公費解体の利用を検討する際には、注意点を確認してから進めていきましょう。
所有者全員の合意が必要
公費解体を申請する家屋が共有であった場合、所有者全員の合意が必要です。
公費解体を申請するだけであれば、共有者のうちの1人が代表としておこなえます。
しかし、公費解体の申請書類の中には、共有者全員の実印を押した上、全員分の印鑑証明書を添付した同意書の作成が必要です。
ただし、例外もあり共有者に未成年者や成年被後見人がいる場合、親権者が後見人の同意が必要になります。
残置物は事前に撤去しなくてはいけない
公費解体を実行する前には、残置物をあらかじめ撤去しなくてはいけません。
大災害時で半壊以上の状態になった家屋から残置物を撤去するのは容易でなく、また前面道路が被災した物で利用できないケースもあります。
被災者が残置物を撤去するのはかなり難しく、簡単に解体工事が開始できるとは考えないほうがいいでしょう。
なお、不必要な残置物が建物と同時に解体できるかは、あらかじめ自治体に確認しておくことが大切です。
ブロック塀や庭木など対象にならないものがある
公費解体には対象範囲が決まっており、ブロック塀や庭木など対象にならないものがあります。
公費解体の対象にならない建造物まで壊す場合、対象外の物を壊した費用は申請者の負担となります。
建物以外の建造物の撤去費用は決して安くないため、ある程度の出費は考慮しておかなければなりません。
災害発生日以降に所有者が変わったら対象にならない
被災日以降に解体する建物が売買、贈与で所有者が変わると公費解体の対象になりません。
ただし、被災日以降に相続で所有権が変わった場合、相続人全員の同意があれば公費解体を利用できます。
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